モジュールの過積載、今がチャンス!

今日は、問い合わせの多いモジュールの過積載についてお話します。最近の太陽光発電システムは、パワコンの出力よりモジュールの出力が大きい過積載が一般的になっております。システム全体の中で多くのロスが生まれ100%の能力を引き出せないからです。これは、パワコンもしくはモジュールの性能が悪いから起きるのではなく、配線経路の中でロスが生まれていると考えられます。ここでは過積載による効果・方法及び注意点についてご説明いたします。

1. 過積載による効果

(システム全体から生まれるロス)
システムから生まれるロスとは、温度が最も影響いたします。例えば、モジュールの表面温度。モジュールメーカーが出している出力は25℃の環境温度の時の出力です。メーカーによって異なりますが、大体温度が1℃上昇するごとに効率が0.3%強低下(逆に1℃低下すると0.3%強効率がアップする)いたします。夏場の正午などモジュールの表面温度が50℃以上に上がることはざらにあります。表面温度が50℃になれば、+25℃ですので7.5%強の効率がダウンしてしまうということです。次に実際のケーブル内だけでなくモジュールやパワコンなどの中の配線も超電導状態でない限り抵抗がありロスが生まれます。この配線の温度が高まれば抵抗は大きくなり、更に大きなロスとなってしまうわけです。このようにシステムのおけるロスの元凶は温度上昇ということになりますが、太陽光システムにおいて、それなりの電圧をかけて電流を流す以上、温度上昇というのは避けて通れないものなのです。

(過積載による効果)
過積載はシステム全体から生まれるロスを補うこととなります。過積載は、ロスにより最大出力に届かないシステムを、モジュールを過積載することによってパワコンの最大出力までもっていく効果があります。つまりパワコンの能力を最大限引き出してあげるわけです。その他、ロスが無くても最大出力まで届かないような冬場や一年を通して朝・晩の発電量を嵩上げする効果も出てきます。そして20年間トータルで実際の発電量を大幅にアップさせることとなります。

過積載による1日の発電量の変化

(経済的な効果)
過積載は、モジュールを増やしてもその分のパワコンまでは増やしませんから、kw当りコストは低くなります。つまりコストパフォーマンスが良くなるということです。

2. 方法

過積載の方法は、これまでのシステムの構成を把握してモジュールを増やすだけです。パワコンには入力最大電圧というものがあります。このパワコンの入力最大電圧を超えないように直列のモジュール枚数を決めているはずです。中にはマルチストリングのパワコンなど各入力回路の電圧がまちまちであってもかまわないというパワコンもありますが、一般的には、過積載をした場合は一つのパワコンの各回路への入力電圧を揃えることが重要となります。
よく後から過積載する場合、既設のモジュールと違うモジュールを付けても良いかという質問を受けます。答えは、できるだけ同じモジュールが良いでしょう。違うモジュールでも良いのですが、その場合はモジュールのスペックとモジュール特性(特に温度特性)などができるだけ近いものを選んで下さいと回答しております。また新設するモジュールは既設のモジュールよりスペック上劣るものは使用しないで下さいとも申し上げております。パワコンを分散型のシステムで配線しているような場合は、違ったモジュールを設置するならば、新設したモジュールはできるだけパワコンを分けて配線しなおして下さいともお勧めしております。これらの点を考慮せず過積載をしてしまうと、発電量は増加しますが、全体の効率を多少下げてしまうことになるでしょう。

3. 過積載のデメリット

過積載のデメリットを上げますと、発電量の多い春先と夏場の天気のいい日の正午を挟んで数時間の発電量がパワコンの最大出力のところでカットされるぐらいです。しかし1年を通して考えると、その時間は僅かな時間であります。現実当社で観測している発電所の例(下表)を挙げますと、パワコン:モジュールが1:1.45、つまり145%の過積載を行ったときの年間発電量の年比較は139%(2014年7月に落雷があり約1ヵ月全体の20%がダウンしていたため7、8月は計算から除いております)でした。これがパワコン:モジュールが1:1.1の時に至っては112%で過積載割合を2%アウトパフォームしたという結果も出ております。年によって、日射量の差が出てきますので、きっちりとした数字では表すことはできませんが、上記結果は発電量のピークカットはありながらも、概ね過積載した分の発電量は増加していると言っても良いのではないでしょうか。つまり、発電量のピークカットはそれ程気にならいということを証明しております。

過積載することによって、パワコンへ負担がかかるのではないかというご質問を受けます。パワコンで劣化が進みやすいのは電解コンデンサーです。この電解コンデンサーは温度によって寿命が変わってきます。その寿命は以下の計算式で表されます。
Ln=L×2(To – Tn)/10
Ln=予測寿命
L=20年(設計寿命)
To=30℃
Tn=周囲温度
以上の式で計算しますと、30℃の環境温度下でパワコンを運転していた場合、電解コンデンサーは20年間の寿命(ちなみに40℃の環境温度で運転すると10年の寿命となります)ということです。もちろん過積載することによって発電量も多くなり過積載する前よりパワコン内部の温度も上昇するでしょう。しかしそれでもパワコンの最大出力を超えて発電することはありません。つまりメーカーの設計の範囲内ということです。過積載による温度上昇を気にするよりか、パワコンが収納されているエンクロージャー内部の冷房温度や外にパワコンが設置されている場合は、日陰で風通しの良いところに設置されているかということを気遣った方が良いかと思われます。実際パワコンメーカーの人に聞いたところ、160%の過積載で運転しても置かれている環境が良ければパワコンに異常は見られなかったということを聞いております。
こう見ていきますと、過積載によるデメリットは年間にすると僅かなピークカットロス(モジュールの発電がパワコンの出力を超えてしまうロス)ということになるでしょう。それは全体の発電量の嵩上げで十分補えると思います。

4. 過積載のおすすめ

当社では、以上述べたことから過積載を推奨しておりまして、実際多くのお喜びの声を頂いております。ただし最近、経産省で既設のシステムに後から過積載をすることに対して規制する動きも見られます。過積載をすると、増やしたものの買取価格が設置当時の電力買取価格40円とか36円が適用されて不公平だということらしいです。以前「経産省に物申す!」でも書きましたが、過積載はパワコンの能力を最大限発揮させるための知恵。しかも、最初に届出た認定出力は超えることはないため、電力会社の送電網への負荷も計算済のはずです。全くもって「ひがみやっかみ」の意見としか言いようがありません。とは言っても、そういう意見が出ているということも事実です。また過積載分の売電期間は、既設のシステムが売電を始めてから20年のendは一緒ですから、モジュールの増設をするにしても時間が後になればなる程その効果は薄れてきます。規制がかかっていない今が最後のチャンスかもしれません。